2009年7月11日土曜日

FLY WITH ME 012--

ひとは、涙雨だという。
篠を乱す本降り。わたしの心にも、雨季が訪れる。
窓から眺める、暗い街並みが、上から流されるようにしながら、明かりの軌跡をくゆらせる。
さめざめとした、これは女の情念なの。
待ち続けても、裏切られる、契りのかけらすら、今は残っていなくて。
問い質しても、虚しく溶ける、曇り空の霞の中。
全て洗い流せはしない、張り付いた微かな温もりが、明け方の時刻に紛れて、秒針を引き留める。
雨音。目を瞑っても、胸の内に反響して、静まることを許さない。
このまま雫を伝って、天に還りたい。
奪われた光明を、あの雲の向こう側に求めて。
わたしひとりでも、架け橋をつくる。わたし自身が渡っていくための、虹色の天の大橋を、やがてあなたの袂まで届けるために。
しとしととした、未練が消えない。でも、わたしだって、晴れ間を覗きたい。
傘は、もういらない。雨上がりには、きっとダンス。水たまりを弾けさせて、そこここに小さな虹をつくる、軽やかなステップ。
陰鬱な雨を、ミュージカルみたいな演出に変える魔法。
やあ、すべてはただの思い過ごし。止まない雨は、ないんだね。
ずぶ濡れになって、なんだか心から笑えるようになった。

FLY WITH ME 011--

変わらぬ友情を。
旅立つ背中は、いつの間にか、凛々しくなってたね。
いつしか、弧を描いて湾をかすめ飛ぶ、あの大きな翼の群れに連なっていく。
大海を越えていく、きみは新たな自分と向き合いながら、見たこともない青い空を仰ぐ。きみの後ろにたなびく白いスカーフは、帆風をまとって、進んできた航路を記す。
また会うときは、お互いが馳せる思いを解き放とうよ。意固地になってた、小さな葛藤の渦や、小競り合いで傷ついた掌を、“せーの”で広げて。
見送るぼくは、それだけを楽しみに描いて、小さくきみの後ろ姿に向かって呟いたんだ。振り向かずに、きみが手を振ったその背中。大空に飛び立つ前の、搭乗の間際、絵になる格好でエスカレーション。
その姿が沈み行く寸前に、ぼくは躊躇っていた言葉を発した。
「GOOD LUCK!!」。その言葉は、忙しなく行き交う人の波、引きずられるキャリーバッグのローラーに轢き殺されつつも、それでもきみが微笑む様子が、背中越しに伝わってきた気がする。
視線を変えると、総ガラス張りの向こうには、待機するエアライン。
青空が、きみを包むまでは、屋上から見送ろう。白い雲の筋が、きみを追いかけていくように。

夏雲

涼風

グリーン

ランデブー

雨音

水無月