2009年5月26日火曜日

FLY WITH ME 010--

颯爽と通り抜ける、華麗なる美女群。
痛快ウキウキ通りが色めきたつ。
しなしなと歩く、ヒツジたちをよそに、今を駆け抜けるようなサーバル。
たなびく黒髪、栗色、亜麻色の揺らめきも。待ち焦がれる、重力が拡散するシーズン。そうして、夏が来た! 
グリーンの日よけから木漏れ日、街路樹が喜ぶように喝采のダンス。
心躍らせる、ヒラヒラの短い丈が幾重にも重なる小さな上り坂は、眩しい太陽をはねかえす早熟なパワーを再充填。ビーナス通りから、ミハス坂までを埋め尽くす。見えそうで見えない、危なげな恥じらいを隠して。
やがて、オアシスのような潤いを満たす、女神たちが目覚める。むきだしの若さも、艶やかな体躯も兼ね備えた、刹那ときめく、きらめきもはらんで、いま、恋をする、夢に向かう、ひたむきに、感情的に、したたかにも、信じてる、囚われない、……決して、負けない! 
坂を上りきったら、遥かに見えるビーチまで。
夏空に、女神たちのカーニバルは止まらない。

2009年5月18日月曜日

FLY WITH ME 009--

過去に戻ることは、叶わない。
グラスに、蛇口から流れる水を注ぎ落としながら、あふれるたびにひっくり返す。
止まらない、流れのままにしばらく受け止めては空に戻し、と虚ろな動作を繰り返す。機械的に、まるで鹿おどしのように。
流れ行く水流を、水底まで這うように追いかけて、渦を巻いて吸い込まれるまでを見極める。流れていく、その様だけを、時間があれば、いつまでも眺めていたい。
これは僕の儀式。
締めくくりに、グラスいっぱいの水を飲み干して儀式を終えると、すぐに着替えて車をとばした。溢れるような想いがこみ上げてきて、いてもたってもいられない。
謝らなくては。やっぱり、この関係は壊したくない。
真夜中のハイウェイ。暗闇に流れる光も数少ない。アクセルを踏むと、時間が流れ落ちる。こぼれていく時間は、そのままま受け止められない僕の心の隙間から、みるみるすり抜ける。いけない。夜が明ける前には、辿り着きたい。
今、誘導灯のようにして、いくつものオレンジの球体が僕を運ぶ。真夜中の滑走路。流れ出したままにしないために、上を向いて、星空の彼方へ。
ならば、未来へ進もう。そのために、地球の回転が加速度を増した。

2009年5月12日火曜日

FLY WITH ME 008--

花びらが高く舞う。上昇気流。
戯れるようにしてビルを飛び越えて。
地上から吹き上げられて、一体どこへと、その身を運ぶのだろうか。
陽光にきらきらと、春風にひらひらと。軽やかに、ふわりふわりと。
白い雪のような、淡いピンクの、散る想いにも似た。
切ないけど、晴れ晴れとして、朗らか。
パレードに舞う紙ふぶきのようで、とても静かな祝祭。
わたしはまだ、はらはらと力尽きたように舞い落ちる一弁をつかめない。
目の前を揺らめいて、過ぎていくたびに手を伸ばしても、すり抜けるようにかわされる。
高らかに舞ったのだから、たやすくはつかまらない。
敷き詰められた一面のピンク。どこに流れ着くの。何を覆い隠すの。
季節がめぐり来るまで、空に溶けてしまうほどに透き通って、誰にも見せない、つかまらない。
永遠のようでいて、儚い。
繰り返し繰り返し、わたしは同じ空を仰ぐ。
その瞬間、横切っていくのは、いつも同じ、春の陽気に舞う桜吹雪。
わたしの髪の毛だけは、あの頃よりも短くなった。
今年は、桜はまだ咲いている。
まだ、すべてを散らさないで。この想いをしたためるまで。

FLY WITH ME 007--

思えば、数字の羅列で想いを伝える、ある種の暗号。
スパイのやりとりみたいな、そんな二人の間の秘め事。
ストレートな想いも、一瞬に沸く感情も、短い言葉に置き換えるため、法則にしたがったり、数字を当て読みしたり。
少ないルールに則ったのって、こんなときぐらいかも。
縛られた中でも、わずかなリーチに望みを託して、気持ちを一時でも早く届けたくて。そんな、かつての伝達手段。
不思議、想いって、空間を伝播する。駆け巡る。言葉が文字となって、直に伝わっていく。
世界はもっと早くなる。周波数が乱れて、やがて膨大に押し寄せるトラフィックの津波。声も、言葉も、文字も、絵も、写真も、何もかも。
差し障り無く頭上をビビビと通過する間に、体をすり抜ける、けして掴めない時間もまた、駆け足で一人一人の持分を奪い去る。
時を待つ間、ホームやウインドウに律儀に並ぶ、送受信するアンテナ。
指先が縦横無尽に細かく駆け回り、手繰り寄せるまま、伝えたい、掴みたいことは意のままの小さな筐体を手繰る。
時が移り変わればまた、システムが変わる。人の在り方も変わる。
想いは、今も3,000,000 MHzに乗って交錯する。ピンポイントの所在をターゲットに、確実に届けて、ディスプレイに浮かび、メモリーに刻んでいく。
体の内に秘められた想いは、抜け出すことはないのかな。ニュートリノみたいに透過する幾筋もの軌跡。捉えられたなら、それは奇跡。
閃いたら、飛び出さずに、打刻して、発信せよ。無限に拡散する前に、きみに届け。

FLY WITH ME 006--

臨界点、突破。さあ、どうしてやろうか。レベル5。
人の気持ちってやつを踏みにじる罵倒。罵詈雑言。仕事を隠れ蓑に、正当化する横暴。
それも含めた姿が真のおまえだろ。
「本当はいいひと」なんて、性善説なんか信じない。
理不尽なことだらけで、優しさのかけらもない人格。人間性が疑われる、粗雑な心。
感情に任せて、おれを愚弄する幼稚さ。やつの、沸点の低いドロドロの血。腐った魂。
忘れたのか? おれは何度もよぎるおまえの顔や仕打ちを、やり場のない殺意でもって丹念に綴っている。
後先を考えるのをやめた。「殴ってやる」
空気が変わる。歌が流れる。「今からそいつを、これからそいつを殴りにいこうか!!」。
おれは拳にありったけの力を込めて、大きく振り上げる。
無言のまま、射抜くようにやつの顔めがけて繰り出すと、一瞬の衝撃と硬い音が響いた。
手応え。それから、勝鬨の声。
おれは自らの拳の痛みを忘れて、何度も何度も狂ったように鉄槌を振り下ろす。血祭りだ。
曲が、「スカイハイ」に切り替わった。そして「お逝きなさい」。
すなわち、切っ先を向けた侍、切捨て御免。
やつの不浄なる魂が虚空へと滅殺され、ガタガタの奥歯の音が地べたに這いつくばって、残響している。
少しは、知れたか。おれを嘗めるな。
久々に、晴れ晴れとした気分で青空を見上げた。

2009年5月6日水曜日

FLY WITH ME 005--

着地を誤った。目検討の着陸地点は、はるか彼方に逸れている。
新天地を目指して漕ぎ出した船のつもりが、いつのまにやら漂流し始め、海から空に至るや、即座に緊急着陸。
身一つで岬に立つ。やがて、サバイバルが始る。狼煙が上がった。漂着者である僕は、フィールドの様相がつかめない。
掟は理解できる。正しく積まれた食物連鎖のヒエラルキー。増加する離脱者は、いわば死傷者と同義。フィボナッチ数に従ったペースで累積される数字。弱肉強食のもと、焼肉定食にありつけるのか。仲間がまだみつからない。孤軍奮闘。
先住民が狩りに来る。血潮が騒ぐ鼓の嵐。追い詰められて、今や断崖の上。
日が落ちる前に、向こう側へ飛べ。眼下の激流に怯まず、迫り来る奪う手を振り払い、臆することなく助走しろ。大地が途切れるまで加速して、タナトスさえも蹴散らして、冥府の先をめがけて飛び越えろ。
蹴り上がったその身は高く高く舞い、沈みかけの太陽に染まる、重なるシルエット。灼熱の絶海にあっても、翼はもがれていなかった。対岸に届け。
生き延びる術は、もう無い。

2009年5月5日火曜日

はるいろ

野花

青竹

暁光